東京高等裁判所 昭和62年(行ケ)224号 判決
一 請求の原因一(特許庁における手続の経緯)、同二(本願発明の要旨)、同三(審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、原告主張の審決の取消事由について検討する。
1 成立に争いのない甲第二、第三号証によれば、本願発明の技術的課題、構成及び作用効果は次のとおりであることが認められる。
(一) 本願発明は、自動車用のデジタル式のスキツド防止用電子制御システムに関する。このシステムでは、各被制御車輪はそれに固有のチヤンネルを割り当てられており、各チヤンネルはアナログ―デジタル変換器(以下「A―D変換器」という。)を用いて測定信号をデジタル値に変換し、このA―D変換器に演算回路を接続して、ブレーキ圧力を制御する最終制御素子を制御するための出力信号を得るようにしている。このようなシステムにおいては、システムの故障が車両の運行に支障をきたさないようにする必要があり、故障時にシステムの動作を停止させる監視回路が用いられるが、監視回路が故障した場合にはスキツド防止用制御システムの故障を検出できなくなるので、故障検出のための装置が必要である(本願明細書第五頁第七行ないし第六頁第一四行)。
本願発明は、このような故障検出手段を備えた、デジタル演算回路に対する実質的に安全な監視回路を有する複数のチヤンネルを有するデジタル式のスキツド防止用電子制御システムを提供することを目的とするものである(本願明細書第六頁第一五行ないし第一八行)。
(二) 本願発明は、前記目的を達成するため、特許請求の範囲(本願発明の要旨)記載の構成(昭和五九年八月三〇日付け手続補正書二枚目第二行ないし三枚目第一九行)を採用したものであり、実施例(別紙図面(一)参照)に基づいて、そのシステムを検討すると次のとおりである。
車輪の回転速度に応じた一連のパルスを発生する速度センサ10、11、12、13が各車輪に設けられ、A―D変換器20、21、22、23により各センサの出力信号がデジタル値に変換される。まず、第一車輪についてみると、A―D変換器で発生されたデジタル信号はデジタル演算回路Aに供給され、速度センサ10で監視されている車輪ロツク状態で制御信号がデジタル演算回路Aの出力に現れ、その出力はトランジスタ30に供給され、トランジスタ30が導通し、マグネツト巻線40の一端を車両の接地線に接続する。マグネツト巻線40の他端が接続されるライン56は、スキツド防止用電子制御システムが何のトラブルもなく動作している間はバツテリの正端子に接続されており、このマグネツト巻線は第一車輪の流体ブレーキライン中のソレノイド駆動調節バルブを制御する。第二車輪11、第三車輪12、第四車輪13についても、第一車輪と同様にデジタル演算回路B、C、D、トランジスタ31、32、33、マグネツト巻線41、42、43が設けられ、同様の動作をしている。
デジタル演算回路に加えて各チヤンネルは、図示のように関連チヤンネルのデジタル演算回路の大文字に対応した小文字で示された、各チヤンネル中のデジタル演算回路と等しい第二回路a、b、c、dを有している。各チヤンネル中のデジタル演算回路及び第二回路はすべて等しいので、デジタル演算回路A及び第二回路aによつて生成された出力信号は等しい。同様に、デジタル演算回路D及び第二回路dによつて形成される出力信号は等しいが、出力信号は監視されている車輪の回転状態に依存しているのでデジタル演算回路A及び第二回路aによつて形成される出力信号とは異なつていることがある。
反一致素子から成る比較器1~8が図示のように接続されている、この接続によれば、同等の交番信号が比較器1、2及び3、4の出力に現れる。比較器1、3の出力は比較器6の二つの入力に結合され、比較器2、4の出力は比較器5の二つの入力に結合され、これにより同等な交番信号が比較器5、6の出力に現れ、これらの出力信号は各々比較器7、8の二つの入力に供給され、その結果、同等な交番信号が比較器7、8の出力に現れる。
もしもスキツド防止制御が完全に行われ、同じ信号が関連したデジタル演算回路、第二回路の出力に現れているときは、比較器7、8の出力信号は理論上零となる。この零信号は、比較器7、8の出力側で反転され、論理“1”信号となり、トランジスタ50、51を導通状態に保持し、リレー52を駆動して接点57を閉状態に保持し、これによりライン56とバツテリの正端子に接続されたライン53との接続が行われる。
もしも比較器7、8の出力のうち一方がスキツド防止用制御システムの故障により論理レベルが“1”から“0”になると、トランジスタ50、51のうちの一方が非導通状態となり、リレー52は消勢され接点57が開放されてスキツド防止用電子制御システム全体に電流が流れなくなりブレーキに対する制限システムの作用が解除される(本願明細書第一〇頁第六行ないし第一六頁第一三行)。
(三) 本願発明は前記構成を採用することにより、時には等しく、また時には等しくなくなる信号を常に比較器で受ける結果、スキツド防止制御が完全に行われていれば二個の同一方向に交番する信号が最終比較器に与えられ、故障であれば右の二個の交番信号が最終比較器に与えられなくなつてその出力から故障状態を検出することができ、確実な故障の検出を行うことができるという作用効果を奏するものである(同第七頁第一六行ないし第八頁第二〇行)。
2 前記1認定のとおり、本願発明は、各チヤンネルに設けられた(センサによつて測定された信号をデジタル化する変換器(20、21、22、23)に接続された)演算回路(A、B、C、D)に並列に第二回路(a、b、c、d)を接続して設けることを必須の構成要件とするものである。
ところで、審決は、引用例には、「自動車の各被制御車輪に対して夫々割り当てられた複数の異なつたチヤンネルを含み(中略)前記チヤンネルの各々は(中略)周波数・電圧変換器及び記憶回路に並列に接続された(中略)第二回路11a13a、11b13bとを含み」と記載されているものと認定し、本願発明と引用例記載の発明とは、「速度センサーが発生する信号を波形整形した後同等の演算回路及び第二回路を経て出力し(中略)この二個の出力信号が論理回路のエラー状態の検出に用いられるスキツド防止用電子制御システムの基本構成において一致しており、具体的構成における差異点は、本願発明においては信号処理がデジタル的になされるのに対して、引用例記載の発明では、波形整形回路の出力信号が電圧に変換されてアナログ的に処理される点にのみ存する」と認定しているから、引用例記載の発明は、各チヤンネルに設けられた演算回路(引用例記載の発明における周波数・電圧変換器及び記憶回路4a4b、7a7b)に並列に第二回路を接続して設ける構成において本願発明の要旨とする前記構成と一致すると認定していることが明らかである。
原告は、審決の第二回路に関する右認定は誤りである旨主張するので、まずこの点について検討する。
成立に争いのない甲第四号証によれば、引用例記載の発明は、乗物の各ホイールの速度信号を乗物の実際の速度にほぼ等しい速度基準信号と比較し、比較している信号間に不一致が生じた場合にホイールがスキツドを起こしていることを表示する乗物用アンチスキツドブレーキ制御装置に関する(第一欄第六行ないし第一二行)ものであつて、その技術的課題(目的)及び構成は次のとおりであることが認められる。
(一) 速度信号の形成用にホイールに設けられている電子回路のいずれか一つが故障して、故障した回路のホイール速度信号が上昇すると、ホイール速度信号から形成される速度基準信号も上昇し、偽基準信号が形成され、この偽基準信号と他のホイールの速度が比較されるため、アンチスキツド装置には不正確な制御信号が供給される。したがつて、ホイールブレーキ圧が正常に調整されず、乗物が停止するまでの距離が長くなる欠点を有する。そこで、速度基準信号を形成する電子回路が故障したときにアンチスキツド制御装置を外す安全装置を設けることも試みられているが、このような安全装置も無条件に役立つものではない(第一欄第四三行ないし第二欄第三行)。
引用例記載の発明の第一の目的は、各ホイールの速度信号との比較に用いられる速度基準信号の形成に関与するホイールの速度信号の一つに故障により異常が生じてもほぼ通常の距離で乗物を確実に停止させることのできるアンチスキツドブレーキ制御装置を提供することにあり、別の目的は、ブレーキが作用していないときに、あるホイールの速度信号発生器が故障した場合にのみ、アンチスキツドブレーキ制御を外すことである(第二欄第四行ないし第一五行)。
(二) 引用例記載の発明において、前記目的を達成するために採用された構成及びその作用は次のとおりである。
乗物の速度にほぼ等しい速度基準信号の形成に関与しているホイールの一つ一つにホイール速度信号発生器回路が余分に設けられている。
低電圧信号選択ユニツトにより各ホイールから得られた基準速度信号のうちで低い信号が真実の基準速度信号として選択されるので、あるホイールの速度信号発生器回路の故障により異常に上昇した速度信号は基準速度信号の形成には関与しない。したがつて、信号の比較が行われると、基準速度信号は上昇したホイール速度より低いので、信号発生器回路が故障しているホイールはアンチスキツド制御によるブレーキ圧の調整を受けない。
あるホイールの速度信号が故障により異常に減少する場合には、低くなつた信号が基準信号の形成に用いられようとするときに、低信号選択網の前に配置されている最大電圧選択ユニツトにより低ホイール速度信号が打ち消される。この例では、基準速度信号は信号発生回路が故障しているホイールの速度信号よりも高いので、信号発生回路が故障しているホイールも実際にブレーキ圧が調整される。ところで、異常に高い信号又は異常に低い信号が故障によつて一ホイールから得られても、他のホイールはいずれもアンチスキツド制御装置によつて正確に制御されているので停止距離の延長は防止される。
さらに、別の低電圧選択ユニツトによつて各ホイールの速度信号の中から低いものが選択され、これが別の高電圧選択ユニツトによつて選択された高ホイール選択信号と比較されて、一つ以上のホイールの速度が他のホイールの速度と相違する場合には必ずエラー信号が発生される。このエラー信号は遅延回路を介して一方では警報器を作動させ、他方ではブレーキが掛けられていないときに作動するANDゲートに出力を発生させる。ANDゲートの出力によりアンチスキツド制御が外され、アンチスキツド制御装置を有する電子回路の故障が警報器により運転手に通報される(第二欄第一六行ないし第五七行)。
(三) 引用例記載の発明における前記構成の詳細は更にブロツク図(別紙図面(二)参照)により説明されているが、その概要は次のとおりである。
従動フロントホイール1aに回転インパルスセンサ2aを、従動フロントホイール1bに回転インパルスセンサ2bを備え、各センサは対応するホイールの回転速度に比例したパルス周波数のインパルスを発生する。このインパルスは直列接続された信号発生網に供給される。各信号発生網は、正弦波インパルスを方形波に変換する波形整形回路3a又は3bと、方形波インパルスの周波数の大きさに比例した直流電圧を発生する周波数・電圧変換器4a又は4bとで構成されている。変換器4aから出力される電圧は、比較器6aと記憶回路7aに供給され、変換器4bから出力される電圧は、比較器6bと記憶回路7bに供給される。波形整形回路9aと電圧変換器11aとで構成された補助信号発生網及び波形整形回路9bと電圧変換器11bとで構成された補助信号発生網がそれぞれ前記両信号発生網に平行して設けられている。一方の補助信号発生網の出力電圧は、並列に接続されている微分回路12aと記憶回路13aに供給され、他方の補助信号発生網の出力電圧は、並列に接続されている微分回路12bと記憶回路13bとに供給されている。記憶回路13a、13bの出力電圧は選択ユニツト8に類似の高電圧選択ユニツト14に供給され、選択ユニツト14は余分ではあるが実際の乗物速度にほぼ等しい電圧を発生する。選択ユニツト8、14の出力電圧は低電圧選択ユニツト15に供給されて、いずれか低い方の電圧が低電圧選択ユニツトから出力される。低電圧選択ユニツト15の出力電圧は、乗物の速度に等しい最終的な基準速度信号であり、比較器6a、6bに供給されてホイール1a及び1bのそれぞれから得られたホイール速度電圧と比較される。ホイール速度信号が最終基準信号よりも所定量だけ低くなると、比較器6aはワイヤ16aを介して、比較器6bはワイヤ16bを介してそれぞれスキツド制御信号をホイールスキツド論理制御装置に供給する。電圧選択ユニツト8、14からの出力電圧は、高電圧選択ユニツト17にも供給されここで両電圧のうちの高い電圧が選択される。選択された電圧信号は、比較器18の一入力端子に供給される。
一方、リアホイール19aには回転インパルスセンサ21aが、リアホイール19bには回転インパルスセンサ21bが設けられ、フロントホイール1a、1bの信号発生網と同一構成の信号発生網(波形整形回路22aと22b、周波数・電圧変換器23aと23b)に直列にそれぞれ接続されている。周波数・電圧変換器23aと23bの出力電圧はそれぞれリアホイール19aと19bのホイール速度に比例し、一方では比較回路に供給され、他方では低電圧選択ユニツト24に供給される。この低電圧選択ユニツト24には、フロントホイールに関連した四個の電圧網の電圧信号も入力されており、その出力はホイール速度信号の中で最も低い信号を示し、比較器18の他の入力端子に供給される。この比較器18は、両入力電圧間に所定の差が生じるとエラー信号を出力する。このエラー信号は、反応時間を遅延させるタイマー25に供給され、所定時間だけ遅延されてからANDゲート26及び光学的警報装置27に供給される。ANDゲート26には否定入力端子が設けられていて、作動電流はブレーキ圧がある場合にブレーキ圧スイツチ29を介してタイマー28に供給される。したがつて、ANDゲート26はブレーキが解除してから所定時間だけ経過したときに初めて作動して、比較器18のエラー信号に応じてアンチスキツド制御機能の動作を停止させる解除信号を生成する(第二欄第六五行ないし第四欄第六〇行)。
以上の認定事実によれば、引用例記載の発明において、乗物の速度にほぼ等しい速度基準信号(最終基準速度信号)は、前輪すなわち従動フロントホイール1a、1bに係る構成から得られるものであり、この最終基準速度信号の形成に関与しているホイールにのみ「余分のホイール速度信号発生器回路」すなわち波形整形回路9aと周波数・電圧変換器11a、波形整形回路9bと周波数・電圧変換器11bとでそれぞれ構成される補助信号発生網が設けられることを示しており、これに対し後輪すなわちリアホイール19a、19bは、この最終基準速度信号の形成に関与するものではなく、補助信号発生網が設けられていない。そして、本願発明の構成と対比すると、引用例記載の発明において前輪にのみ設けられた補助信号発生網とこれに接続された記憶回路13a、13bが審決認定の本願発明における第二回路に対応することが明らかである。
前掲甲第四号証によれば、引用例にはリアホイールに関して前記認定のほか、次の記載が存するが、これらはいずれもリアホイールに前記補助信号発生網及び記憶回路を設けることを意味するものではない。すなわち、引用例には、「ここでは、容易に理解できるようにするために、フロントホイールの比較器しか示していないが、実際には同様の比較器を全てのホイールに設けて各ホイールの速度信号と最終基準速度信号とが比較されることに注意されたい」(第四欄第七行ないし第一三行)と記載されているが、最終基準速度信号は、前記ブロツク図及び同図に関する説明によれば、二つの高電圧選択ユニツト8、14の出力電圧を低電圧選択ユニツト15でいずれか一方の低い電圧が選択されて得られたものであつて、右記載は各後輪のホイール速度信号が各後輪に対応して設けられた比較器(図示されていない)によりこの最終基準速度信号と比較され、スキツド制御信号が出力されていくことを説明したものと解され、この記載からは後輪において前輪と同様な補助信号発生綱が設けられているものということはできない。また、引用例には、周波数・電圧変換器23aと23bの出力電圧の供給先について「両出力電圧は、一方ではそれぞれに対応した比較回路(図示されていないが、フロントホイールの場合と同様のもので、ワイヤ16a及び16bを流れる制御信号に対応した制御信号が生成される)に供給され、他方では低電圧選択ユニツト24に供給される」(第四欄第三五行ないし第三九行)と記載されているが、この記載中の括弧内の記載は、前記記載内容に対応するもので、ここでは周波数・電圧変換器23aと23bとの両出力電圧(ホイール速度に比例した電圧)が対応する比較回路に供給されることを述べているにすぎず、補助信号発生網を後輪側に設けることについてはなんら触れられていない。さらに、引用例には、最終基準速度信号と個々のホイール速度信号とがフロントホイール1a及び1bの比較器6a及び6bのような装置で比較される旨の記載に続いて、「リアホイール19a、19bの速度信号は図示されていないが、同様にして最終基準速度信号と比較される」(第五欄第六五行ないし第六欄第二行)と記載されているが、右記載中の「同様にして」は、比較器6a、6bにおけると同様にリアホイールの速度信号が最終基準速度信号と比較されることを意味していることは文理上明らかである。
そして、前掲甲第四号証を検討しても、ほかにリアホイールに前記補助信号発生網及び記憶回路を設けることの明示的な記載もこれを示唆する記載も存しない。
被告は、引用例の前記第四欄第三五行ないし第三九行の記載を援用して、引用例には、前輪の記憶回路7a等及び比較器6a等に対応する後輪の回路素子の存在と、前輪とは異なる構成ではあるが後輪でもセンサ出力が並列に二重化処理することが示されており、全体としてエラー状態の検出に関与しているから本願発明の第二回路と同一である旨主張する。
しかしながら、被告が援用する引用例の記載の技術的意味は前述のとおりであつて、引用例の前記認定の記載を総合すると、引用例は結局リアホイール19a、19bには、図示は省略されているが比較回路がフロントホイール1a、1bと同様に設けられており、リアホイール19a、19bの速度に比例した周波数・電圧変換器23a、23bの各出力電圧が最終基準信号と比較されていることを述べているにすぎず、かかる記載からリアホイール19a、19bについても、補助信号発生網、記憶回路等がフロントホイール1a、1bと同様に設けられているとみることはできない。また、後輪は最終基準速度信号の形成に関与していないことは前述のとおりであるから、この点からも後輪に記憶回路を設ける必要がないのであつて、被告の右主張は理由がない。
もともと本願発明と引用例記載の発明とはエラーの検出形態を異にすることは前記認定事実から明らかである。すなわち、本願発明では、その要旨に記載のとおり、各チヤンネルに演算回路に並列に接続された同等のテスト回路として用いられる第二回路を設け、演算回路の出力信号と第二回路の出力信号とを一対として比較器で比較処理を進め、これを最終の比較器7、8を介して二個の同一方向の交番信号のみが残つて互いに結合されるようになるまで行い、この比較器7、8の出力信号をエラー状態の検出に用いるものであるのに対して、引用例記載の発明では、エラー信号は低電圧選択ユニツト24において補助信号発生網におけるものも含め各周波数電圧変換器4a、4b、11a、11b、23a、23bの出力電圧、すなわち各ホイールの速度に比例した電圧(この電圧にはホイールのスキツド状態が反映されている。)のうち最低の電圧を取り出し、この最低のホイール速度を示す電圧と、ホイールのスキツド状態が反映されていない乗物の実際の速度を示す電圧選択ユニツト8、14の出力電圧のうち高い方の電圧(故障の場合偽基準速度信号となる。)とを比較器18で比較し、これら両電圧間に所定の差があるときに発生されるものであつて、両者におけるエラーの検出状態には大きな違いがある。そして、審決が引用例記載の発明において本願発明の第二回路に相当するとしたものは、記憶回路13a、13bを含み、スキツド状態が反映された乗物の実際の速度を得ることに用いられるものであるから、本願発明における第二回路とはその機能、作用を異にするものというべきである。
3 以上のとおりであるから、引用例には、「自動車の各被制御車輪に対して夫々割り当てられた複数の異なつたチヤンネルを含み、(中略)前記チヤンネルの各々は、(中略)周波数・電圧変換器及び記憶回路に並列に接続された第二回路11a13a、11b13bとを含む」との技術内容が記載されているとした審決の認定は誤りであり、審決は、引用例の右技術内容を誤認した結果、引用例記載の発明は各チヤンネルに設けられた演算回路に並列に第二回路を接続して設ける構成において本願発明と一致すると誤つて認定したものであり、その誤りは審決の結論に影響を及ぼすことが明らかであるから、その余の取消事由について判断するまでもなく、違法として取消しを免れない。
三 よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は正当として認容することとする。
〔編注1〕本願発明の要旨は左のとおりである。
自動車の各被制御車輪に対して夫々割り当てられた複数の異なつたチヤンネルを含み、各チヤンネルには、センサによつて測定された信号を処理するための複数の論理回路が割り当てられ、各論理回路の出力信号はブレーキ圧力に影響を与える制御素子を制御するように作用し、前記論理回路には、いずれのチヤンネルにも無関係なテスト信号を発生するための、同等の論理回路が並列に接続され、さらに、前記論理回路のエラーの結果としての許容し得ない信号出力が生じたときに、ブレーキに対する制御システムの作用を解除するための複数の比較器を有するところの複数チヤンネルのスキツド防止用制御システムにおいて、前記チヤンネルの各々は、測定された信号をデジタル化する変換器(20、21、22、23)と、この変換器に接続された演算回路(A、B、C、D)と、この演算回路に並列に接続された同等のテスト回路として用いられる第二回路(a.b、c、d)とを含み、同等又は非同等信号検出用の論理素子が前記比較器(1~8)として用いられ、これらの比較器には、二個の同等又は非同等信号検出用の論理素子(1、2、3、4)の出力端に同一方向の交番信号が現れるように、前記演算回路(A、B、C、D)の出力と第二回路(a、b、c、d)の出力とが一対(a、C;c、A;b、D;d、B)となつて供給され、前記比較器(1、2、3、4)の出力信号は、他の同等の比較器(5、6)を介して同様にして組み合わせれ、この組合わせ動作は、最終の同等又は非同等信号検出用の比較器(7、8)を介して、二個の同一方向の交番信号のみが残つて互いに結合されるようになるまで行われ、この比較器(7、8)と出力信号が論理回路(A、B、C、D、a、b、c、d)のエラー状態の検出に用いられるところの、スキツド防止用電子制御システム。
(別紙図面(一)参照)
〔編注2〕本件における図面は左のとおりである。
別紙図面(一)
<省略>
別紙図面(二)
<省略>